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日別アーカイブ: 2020年4月1日

失われゆく宇宙

悲しい、という思いが日増しに強くなります。

新型コロナウイルス感染で苦しむ方が沢山います。お亡くなりになられた方もいます。

人が死ぬということはひとつの宇宙が失われることだ、と言ったのは誰だったでしょうか。

 

天には星はあんまり見えんけど
そのぶん東京は地上に星が降るんだねえ・・・
「天の星は死人のためのもの」
遠くにありて美しい

「地上の星は生身の人間が汗水たらして作るもの」
綺麗なだけではないかもしれんけど
血の通うパワーと温度がある

芦原妃名子『砂時計』

 

無症状者、無症状の潜伏期間があることでの感染拡大というのは未知の経験です。悲しいのではなく、怖いのでしょうか。

 

白きマスクを外して白き言葉あり
落葉積むわが墓ぞ見ゆまぼろしに
枯木にもたれたひとのねがひは音楽
クリスマスカアドにも書けりさびしやと

    中村胖『青い紳士』

 

無症状のまま死ぬわけではありません。発熱と全身倦怠感、呼吸困難といった症状の出る肺炎になります。

 

そのとき私は、私の肋骨の階段を、一歩一歩匐い昇ってくる一匹の蝶を意識した。
蝶は嗜んで花粉を愛する。多分、今、私の肋骨の一枚一枚にも、何か芳しい花粉が
付着しているのかも知れなかった。そして、この蝶の口吻の彈絛が、あるいは頻り
と、伸びたり縮んだりしているのかも知れなかった。だが、私の疲労と倦怠は、よ
うやく槌りついたこの脆弱な昆虫の、ほんの花蕋ほどの触感すら、容易に払いのけ
ることさえ出来なかった。
私は立ち上がって雑木林の丘を歩き出した。私は持てあましたこの昆虫を、どこか
林の下草の中に、宿らせようとしていたのだ。

乾直惠『肋骨と蝶』

 

春はやってきました。
春は呼んでいるのに、蝶は身体の外に出ていかないのでしょうか。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

有限会社アイ・エス・オー 長友