油と水が混ざらない理由ってご存知でしょうか?
これについて考えると、脱線もしていくと、化学の面白さに出会います。
私は廃油処理を行う上で、いつもどうやって処理効率を高められるか、油を精製できるかということの全体制御について考えています。実務的にはコード生成AIと戯れてPLCをいじって機械制御の方をしたいのですが、それはメーカーの問題や個人の趣向からして行動には移さないと思います。
高校化学をやっていない方は比重と言います。それだと不十分です。水溶性の油が不飽和であれば水と分離しにくいです。
高校化学をやっているとコロイド溶液を習ったときのことを覚えていれば、油が無極性分子で構成されており、水が極性分子だからと言えるかもしれません。
HSAB則からすれば、油は共有結合が強い(電子雲を分け合う)ソフトで水は水素結合が強い(電気的に引き付け合う)ハードだからとも言えます。
工藤一秋先生の言葉を借りれば「軌道サイズが大きく核の束縛が小さくなった状況での外殻電子の振舞いが分子間相互作用の支配的要因になる」電荷が「分散している」のがソフトで、「軌道のサイズが小さいことや、核による外殻電子あるいは結合電子の束縛が大きいことが主要因となって分子間相互作用が決まる」「電荷が集中している」のがハードとも説明できます。
排水基準で油の含有量を検査するノルマルヘキサン抽出物質値測定も無極性溶媒にどれくらい溶けるかなので、両親媒性の洗浄剤も影響することがわかります。
センサーや測定器をつけて、何がどういう理由で検出されるか知っておくというのは重要です。
ちなみに、極性分子は電荷の偏りがある(分子全体の電荷の偏りには、電気陰性度の差と偏りを打ち消し合う分子の形をしているかが関係しています)、電子やイオンが自由に動き回れる条件が加えられれば導電性が生まれます。絶縁油って聞いたことあるでしょうか? 油は無極性で電荷の偏りがないので、自由に電子が動き回れず絶縁体になります(不純物が混ざっていたら、油は絶縁でも不純物が電気を通す可能性はあります)。
エマルション化(乳化)した廃油を見て、まず頭によぎるワードは、分子集合体です。これも高校化学でコロイド溶液を勉強した方はおなじみだと思います(ちなみにホットミルクの水面膜はラムスデン現象で、廃油も熱を加えると不純物などによって同現象が起こります)。
色が見えるということは可視光を吸収しているということです。炭素鎖だけを考えれば、π共役系(共役二重結合)の存在を疑うことができます(軌道電子のエネルギー準位が下がるので(ry、無極性分子内に共役二重結合があると(ry…)し、共役系の長さも意識します。
弊社の処理設備では分画分子量(どの程度の分子量サイズを通さないか)という言葉がキーワードのひとつになりますが、結果的に有色液の分子量サイズとの関連性を考えることになります(溶媒、両親媒性など複合的に考えていきます)。実際UF膜を透過した液体はほぼ無色です。
UF膜を通らない分子集合体ということは、分子どうしが力を影響し合っているということです。これのひとつがvan der Waals力で、
無極性どうしのLondon分散力
、
双極子どうし自由回転のKeesom配向力
、
双極子と無極性 自由回転のDebye誘起力
を考えることになります(数式は同種原子間かどうかで少し変わります)。
つまり、非常に弱いとはいえ、油分子と水分子の間にもDebye誘起力が働いています。
とはいえ、実際、分子どうしが近づけば、電子間や原子間での斥力がこれらより強く働くいており、総合して簡便に表すと、
というLennard-Jonesポテンシャルが分子間力式として用いられます(力の距離積分がポテンシャル(エネルギー)なので便宜上力を表す際に置き換えて考えることがあります)。
斥力が距離の12乗に反比例し、引力が距離の6乗に反比例することがすぐに分かります。
これはあくまでも2原子間であり、多原子間になるとベクトル方向など複雑性を増していくことは直感的に分かると思います。
van der Waals力、分子どうしの引力が働く力は、液体状態をいかに保つかの沸点がひとつの指標になります。密度、粘性、表面張力といった機械的物性の高さは比例します。
距離の近さが重要なので、接触面積(接点)が多い構造が良いので、直鎖の方が多分岐よりもvan der Waals力は働きます。もっとシンプルに炭素数が大きくなって、分子量が大きくなることは接点は増えます。
電荷の偏りができて誘起双極子になるのだから、電子の数が増えればより大きく力が働きますが、例外としてσ結合とπ結合の違いが影響を与えます。π結合は電荷が動きやすく、van der Waals力(誘起双極子モーメント)が大きくなります。つまり、エタンとアセチレンでは、前者の方が電子数は多いのに、後者は2つのπ結合が働くことで、後者がvan der Waals力が強くなります。
色々書きましたが、分子どうしが引き合う力があるので、分子単体として存在しているだけでなく分子集合体として集まっている可能性があります。
炭素は樹脂、ポリマーに代表されるように炭素どうしで安定的共有結合を次々につくっていくのも特徴ですね。(油だけ吸う吸着マット、水を吸う吸水性ポリマーの違いも気になりますか?)
ひとつ考えれば、いろんなことが目移りし、同時にいろんなことが同時に学べます。
さて、どんどん水と油の世界に沼っていきますか?
一旦、筆をおいて、また気が向いたら加筆修正していきます。