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とうとう4月です。積みあがる書類、分析対象のせいか、多くの企業様が新年度を迎える実感がわきません。
強いて言えば、決算棚卸前の緊急処分依頼に、走り回っていたのが小休止になるかなといったところです。
新しい、と言えば、弊社が導入した分離膜装置が1年たちました。
能力や課題について学習データがそれなりに揃いました。
機械とも一部の排水については、一方的ですが、理解と愛が深まったと思っています。
少しずつご紹介させていただき、少しずつ分離膜を使った処理に興味をもっていただいてもらって、弊社に排水処理のご相談をもちかけていただければと思っております。
弊社に分離膜装置導入を手掛けていただいた企業様は排水処理といえばすぐに名前が挙がる企業様ですが、それでも分離膜装置を排水処理で導入したのが初めてでした。
純水製造装置に使うような分離膜を排水処理装置に持ってくるのですから、、、
【処理目的】
導入のメインとなる処理ターゲットはエマルション性含油廃水です。もっとかみ砕いて言えば、「油分を含んでおり、そのままでは放出できないけど、ほとんど水」だから引火性もないような液体です。
これを濃縮していこうという第1のモチベーションです。
更に、きれいな水を取り出そうという第2のモチベーションです。
この2つのモチベーションに合わせて、1次処理、2次処理と二段階濃縮をとります。
【1次処理:UF膜】
1次処理は限外濾過(UF)膜によって、大きな分子と小さな分子を選択的に分離します。圧力を加えて、イオン等の小さい分子を膜から外に出します(大きい分子を膜内に残します)。
医療では血液透析に同じような手法が用いられております。
あくまでも膜です。フィルターのように目は見えません。穴ではなく孔と言い、孔径は1~10nmくらいです。1mの1億~10億分の1です。1mmの10万~100万分の1です。
大きいと言っても、光学顕微鏡でも見えないタンパク質やウイルスサイズすら通りません。
UF膜を透過した液(UF処理水)を目視すると、何も言われなければ水道水に見えます(高濃縮負荷がかかってくると、うっすら白みがかかったり、黄色味を帯びたりします)。
一般に油と認識できるものは確実に透過できないので、油を濃縮することができます。
※厳密には高カロリー燃料のために高濃縮するとマヨネーズ状になり、膜が詰まってしまいますので、低カロリー燃料になります。
【2次処理:RO膜】
2次処理では逆浸透(RO)膜によって、真水のみを膜から外に出します(イオン等のミネラル分といった小さな分子すらも膜内に残します)。
医療だと腹膜透析が浸透圧を利用しておりますが、腹膜透析は正浸透圧現象です。
弊社の処理装置では、逆浸透圧現象を起こさせます。
浸透圧によって溶媒(水)の移動が薄い方から濃い方に膜間を移動することから、逆ベクトルに圧力をかけてあげることで、いわば錯覚させて溶媒の移動が濃い方から薄い方に移動させます(逆浸透)。この薄い方が真水であれば、処理対象の排水から真水のみが移動していくというわけです。
一般にRO膜は純水製造機であったり、海水から飲料水を(脱塩)作ったりするのに使われます。
モジュールと運用方法で廃油のUF処理水でも目詰まりをコントロール運用できるように頑張っています。
彼女が無礙であればあるほど、私の刃はますます深く彼女の死へわけ入った。そのとき刃は新らしい意味をもった。内部へ入らずに、内部へ出たのだ。
(三島由紀夫) |
そうですね、透析みたいなことを汚れた排水でできるのか?と思われることと思います。
しかも、自分が仕入れて、使って、排水したものではなく、目の届かない様々な他者によって手を加えられて排出されたものであるから、安全に、そして、安定的に処理ができるのか?とも。
科学の力を信じろ! とは言いません。
難しい理論を振り回す、、、のはさておいて、原理上、そして、センサーによって、少なくとも安全性は担保できております。
原理上というのは、単純明快(乱暴)に言えば、水ほど小さな分子はないのだから、水しか通れないような穴(孔)を何が通れるのかとも言えます。つまり、物理的に自分の身体より小さな穴は通れないのと同じです。
【処理安全性】
安全性管理のために、万が一、膜が破れたり、穴が広がった(押し通った)としても、電気伝導率で監視して防ぐようにしています。
電気伝導率というのは逆に言えば電気抵抗をみています。不純物(イオン)は電気を通すので、その通りやすさ(電気抵抗の度合い)を監視して、不純物が外に出ていかないように制御しています。基準値を満たさないと出ていきません。
あとは、pH、COD、ノルマルヘキサン値は排水基準値があります。精密に測ること、適度な指標でも頻繁に測ること、事前にセンサーでブロックすることのバランスは大事だと思っています、、、と話がそれていってますね。
そう言えば、廃油とお友達になりたくて、使用油や洗浄剤のSDSみたいな紹介文をいただくこともあるんですが、成分(分子式)が一部非公開であることもあって、名前と顔が一致しないみたいな、もどかしい時があります。
分子が直鎖かどうかでも膜の透過具合が変わってくるので、膜分離を考える上で、処理対象物の成分と分子式は濃縮・分離のイメージ(処理予測)をするのに、頭を巡らせることになります。
分子式ってすごい情報を持っていることを、次は樹脂(プラスチック)識別について書きたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(有)アイ・エス・オー 長友
今年は新しい設備が稼働します。
少しずつブログ上でも説明していきますが、原理もコスト面の採算性も簡単に納得いかないかもしれません。
少なくとも原理は高校化学の教科書に載っている内容を少し掘り下げれば直感的な理解はできることですし、変な言い方になりますが、弊社が騙されていなければ採算性もとれます。
他社が利用して実績も十分な設備を前提に採算性だけ考えて選べば、他の方法があるかもしれません。もっと言えば、身の丈にあった投資でないかもしれません。失敗してもデータが得られるから、そこをもとに自社で開発できる規模の会社でもありません。
と、妙な言い回しでの新年最初のブログの書き出しになりました。
少なくとも油水分離の原理から導かれる漏出リスクは抑え込めているので、当面は想定通りの処理スピードや消耗品の交換スピードでいけるものか怯える日々が続きそうです。
損切も頭の片隅に置きながら、立ち止まる勇気も大事にして、着実に歩みたいです。
もちろん科学への絶対的信頼には人間の認識限界がある以上、油断は禁物ですが。
善きことはカタツムリの速度で動く
(ガンディー『真の独立への道(ヒンド・スワラージ)』) |
塩の行進のように否定されるところからのスタートは同じですが、鉄道という科学文明との対極という点では、弊社のものはより科学的で全否定されるであろうものですが。
正直、今回の設備が使い物にならない(採算が合わない)となれば、「インテリぶった若僧が、親の七光りで社長になった馬鹿息子のくせに勘違いして、ほら言わんことない」と誰かに笑われるかもしれません。
被害妄想すぎますかね。。。
それでも、未来に向けた一歩になると思っています。
悲劇の主人公気取りのナルシストではなく、こんな零細企業でも水資源問題ないしカーボンニュートラルに対してアプローチできることを。
ただ、ニッチな側面が強く、同業者や部品製造等でエマルション性含油廃水の存在を分かっていただける方しか問題意識の共有はできないかもしれません。
これはいつかブログで書くかもしれません。プラスチックリサイクルが簡単に水平リサイクルできると思われているのと同じです。
子どもの頃の純粋にそれが世界のすべてのように好きであれたもの(まっすぐに向き合えたもの)、大人になるにつれて忘れてしまうもの(失わずに成長できないもの)はあるでしょうか?
自分を裏切るまでは生き永らえたかった (中略) こうしたわたしの情熱がすべて覆されてしまうのであれば、わたしはいったいどうなるのだろう? そして、今のわたしはなんなのだろう? (中略) 彼女が変わると、変わる前のもうひとりの彼女はどこへ消えるのだろうか。 (中略) 大人としての彼女は、今の彼女を覚えているだろうか。大人の彼女は今の彼女を馬鹿だと思うのだろうか。 (中略) ほかのだれも自分に忠実でないのなら、せめてわたしだけでもわたしに忠誠をつくさねば。 (中略) わたしだけは死ぬまで自分の自転車に乗りつづけ、自分にふさわしいこの通りを歩きつづけてやろう。 (中略) 彼女が立てた誓いのなかで肝心だったのは、誓いそのものを憶えておくという誓いだった。 アニー・ディラード『石に話すことを教える』 |
星の王子様は以前原語で引用したので、、、
私は今回の設備投資を私を失わないための道標と胸に刻んでおります。
今年もよろしくお願いいたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
(有)アイ・エス・オー 長友
前回の話題に挙げた、アインシュタインの関係式を説明します。
例えば、水質汚染で汚染物質が液体で水中に拡散していく場合、拡散していくのが汚染物質の粒子(分子)であると設定し、当該現象の分析モデルを構築していく、、、と思います。
廃水処理をするのであれば、ブラックボックス化して数値から単に処理できると結論づけるよりも、理論的に組み立てて処理工程で起こっている現象を数式で記述できると安心できるのが、私の性格ですが、一般にみなさんはどうでしょうか。
今では当たり前のように物質を構成するのは分子ないし原子と義務教育でも習いますが、分子は目に見えないような小さなサイズです。従って、直接的に存在証明できません。しかし、分子を前提としてモデリングし算出された値が、実際に起こった現象の測定値と一致すれば、前提条件に間違いがない、分子は存在すると言えるでしょう。
アインシュタインの関係式がこの存在証明方法になります。水中拡散現象を分子の拡散運動としてモデリングし、それが正しいか測定できるようにしました。これによって、原子・分子が存在すると科学的に言えるようになったので、非常に大きな功績になりました。
金澤輝代士先生の「速習・確率過程入門~拡散現象のモデリング~」という講義ノートがウェブ上にありまして、こちらを参考にアインシュタインの関係式を説明していきます。
こちらを利用する理由はモデルでホワイトノイズ項を入れているからです。これは完全に私の好みの問題です(ここではノイズについて説明しません。きれいなバラツキ状態とでも思ってください)。
本稿ではノーテーション説明も省略します。乱暴に感じる記述も、ウェブ上のどこかにちゃんとした説明があるでしょうから、そこで補完してもらえれば。。。
それぞれの式は図示等の視覚化がしやすいので、イメージしながら数式の動きを楽しめると思います。
それでは、原子の実在を確認しましょう!
ブラウン運動する任意の粒子が時間tで位置xにいる確率をP(x,t)としたとき、(連続)確率密度関数で表す。
粒子数の質量保存則より、
レイノルズの輸送定理より空間積分と時間微分を交換
これが連続の式。1次元で考えているので
フィックの法則(流出量は濃度勾配に比例)が成り立つので
連続の式とフィックの法則の式より
ブラウン粒子の拡散現象の確率密度関数は正規分布に従う。
x(t)の初期条件をx(0)=0としたとき
これがデルタ関数の性質を満たすのであったり、フーリエ変換を使っていたりすることは金澤先生の資料の方で。
ランジュバン方程式(ブラウン粒子の運動方程式が水の粘性摩擦と水分子の衝突によるノイズで表せる)より
(ボルツマン定数はKB=R/NA、ホワイトノイズξG)
表現を変えて
平均をとるとさらに両辺にxをかけると
であり、
1次元であるからエネルギー等分配則より
が成り立つので
この微分方程式を解く
と置く。
t=0でf=0より
fを積分してt=0で<x>2=0より
時定数は十分時間が経った(tが大きくなった)とき、ほとんど無視できるので
平均2乗変位より分散であるから
粒子が半径aの球とすれば
以上より、アボガドロ定数を以下のように表せる
右辺の全ての大きさは分かる、もしくは測定できるので、アボガドロ定数が分かります。これが成り立っていれば、原子・分子の存在を仮定することは間違っていないことが分かります(逆にアボガドロ定数が6.02×1023/molとして原子の半径を推定することができる)。
原子・分子を想定することで初めて質量保存則や運動方程式が描けるので、それらの式から導かれた値が現実の数値と一致することは、原子・分子の存在証明になるわけです。
ちなみに、アインシュタインの論文では浸透圧と摩擦力のつり合いから説明しています。
アインシュタインは「私の主目的は,一定の有限な大きさの原子の存在を確証する事実を発見することであった」と説明しています。
ブログに数式を載せるのは難しいですね。どう載せるのか。。。注釈で後述して流れを切らないのは見やすくはありますが、何となく今回はそれより前半は不必要に途中式を載せました。
原子の世界の続編があるかもしれません。
また修正加筆するか、何かリアクションを受けたらPDFファイルを入れます。
※1 微分方程式を解いて拡散係数を求める流れも大雑把ですが、加筆しました。
色々と参考にしたんですが、けっこう誤植やモデルに違和感があるものが散見されましたし、ランジュバン方程式が違うことで拡散係数に質量が入ったものもありましたね(そう言う私もミスがあるかもしれません)。微分方程式を教えるのが目的であれば、モデルの正確性は重要ではないでしょうし。解析学自体はそこそこやったものの、流体力学や統計力学を基礎から勉強したことはないし、アインシュタインの関係式を知ったのも最近なので、モデルの厳密性の議論や発展のさせ方についてはいつの日にか。。。粒子のサイズについては分析したいかもしれません。
それより、拡散モデルを発展させて分析したいですね。
取りあえず、雨の多かった盆休みに1歳児と戯れながら、自分なりに一生懸命頭の中でモデルの世界に潜り込んでインプットしていたので、8月中にアウトプットできてよかったです。
余談ですが、
とFokker-Plank方程式の形をしていれば、
になります。c=0にすれば本稿です。こっちの方が伊藤積分に慣れしたんだ方は安らぎを得ますかね?
それでは最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(有)アイ・エス・オー 長友