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カテゴリー別アーカイブ: 樹脂プラスチック

プラスチック再生の難しさについて

プラスチックのリサイクルは非常に難しいです。再生材は元々の原料(バージン)材より性能が劣ります。更に異物が入りやすく、純度も落ちる傾向にあります。
これは見てもらった方が分かりやすいです。日本放送協会様のNHK fo Schoolに以下の動画があります。

むずかしいプラスチックのリサイクル
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005402558_00000

プラスチックと言っても、種類によって化学構造式は違います。そうすると、融点が違うし、結合力も違います。ですから、混ざってしまうと、動画のように強度が不足してしまいます。また、製品をつくるには、不良成型は出してはいけません。金型でプラスチック製品をつくるとき、金型の通りにうまく固まる必要もありますが、このあたりも異物の入ったプラスチック原料は取扱いが難しいようです。

 

例えば、PETボトルをリサイクル材料にして更にPETボトルを作るのは簡単ではないです。前述のとおり、再生材は品質が劣るからです。PETやPBTのようにエステル結合をもったプラスチックをポリエステルと言いますが、再生材はポリエステル繊維になることが多いようです。

また、少し専門的になってくると、ポリマーアロイといって種類の違うプラスチックをブレンドすることで、互いのメリットを引き出したプラスチックもあります。
中国が廃プラの輸入停止をしたとき、国内でどうリサイクルをするかの議論があったとき、1種類のプラスチックで劣化した性能を、別の種類のプラスチックで補うようにブレンドするポリマーアロイも取り上げられました。
PETは補填材に回ることが多く、PC/PETやPC/PBTを見る機会が多いです。

ただ先の動画の通り、高度に計算された技術がなければ、実用的な強度は達成されません。
プラスチック原料袋にPC(polycarbonate)と表記してあっても、ともに表記されたグレードをメーカーで調べるとポリマーアロイであることも珍しいことではありません。
お客様はPCと思っていても、実はPC/PETだったことがあるので、グレードも合わせて確認することが重要となっております。

 

エンジニアリング的に、プラスチックのリサイクルでは同一種類かつ同一グレード品を大量かつ安定的にリサイクルフローの中に取り込めないと、品質の安定性も採算性も得られません。

したがって、弊社ではお客様にできるだけ種類毎でのプラスチック排出をご協力いただいております。基本的には弊社で仕分すると採算性が合いません。それでも、極力、弊社内でも仕分をするようにしています。
お客様も人間ですから、同一種類で出されたプラスチックの中に他の種類のプラスチックが混入していることがあります。それをそのまま弊社が原料として納品してしまうと、製造ラインのストップ等の多大な迷惑をかけてしまいます。ですから、弊社の従業員は普段からプラスチックの仕分を行うことで、色んな形や硬さのプラスチックに触れ、異物に気付きやすい目を養っております。

また2019年4月からは障がい者グループと協力して、一部の仕分をお願いしています。少しでも資源が無駄にならないよう、きれいなプラスチックは再生材としてよみがえってもらいたいと思っています。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

有限会社アイ・エス・オー 長友

ダイオキシン類

新型コロナウイルスの感染は終わりが見えないですね。目に見えるわけでもなければ、臭いも音もしないので、怖いです。空気感染のリスクはないようですが、飛沫感染や接触感染というのは人間不信を生みかねないので、何かがあったときこそ、ちゃんと地に足をつけて対応したいと思っています。不安を煽るチェーンメールも流行っていますし、有識者が厚生労働省を激しく批判する姿もみますが、専門的知識のない私たちが正しい物差しで判断するのは難しいでしょう。基本は厚生労働省の公開している情報だと思います。

 

今日はダイオキシン類について触れたいと思います。

観測地点や方法(試算方法含めて)によって変わると思いますが、例えば環境省に「化学物質の人へのばく露量モニタリング調査」があります。血液中ダイオキシン類濃度は15年前と比べると大きく減少しています。これは焼却施設や塩素系農薬、ポリ塩化ビフェニル(PCB、人工的に作られた油状の化学物質)に対策がとられたからでしょう。現在閲覧できる最新の報告書は2017年のものです。ダイオキシン類対策特別措置法により設定された耐容一日摂取量を超過した対象者はおらず、平均値および中央値も基準値の10分の1レベルです。

 

ダイオキシン類の化学構造式をご存知でしょうか?

ベンゼン環2つを酸素1つないし2つでつないで、ベンゼン環の水素を塩素に何個か置換した構造式をイメージすればいいと思います。塩素がどこに何個つくかで毒性が変わります。

塩素は人体に何かと強い作用をもたらすイメージがあると思います。それに合わせて、プラスチックの塩化ビニル樹脂(塩ビ)を燃やすことがやり玉に挙げられたわけです。プラスチックで塩素を化学構造式内に持つ一番有名なのが塩ビです。
これがいつの間にか、プラスチック全体が悪者扱いされ、更には燃やしていないのに危険と思われる方も未だにいらっしゃるわけです。
実際は、焼却条件によるものが大きく、空気中の微量な塩分でもダイオキシンは生成されます。火山の噴火や山火事でもダイオキシンは発生するので、完全に消し去ることはできないでしょう。

 

つまり、何が言いたいのかというと、プラスチックは存在自体が汚染を生むわけではなく、使う人間側による問題の方が大きいということです。

 

 

余談です。
人間は何種類のものを識別できるか? 色は750万種類、音は35万種類、臭いは1兆種類以上と言われています。正確な数字は文献によってズレがありますが、聴覚<視覚≪嗅覚なんでしょう。記憶に刻みやすいのは視覚情報ですが、何かを察するには嗅覚を普段から意識しておくといいんでしょうか。吉本隆明『匂いを讀む』は日本文学の匂いを読むことができて面白いです。養老孟司「目の作家・耳の作家―三島由紀夫と宮沢賢治」『カミとヒトの解剖学』も良いですね。ヴァレール・ノヴァリナ『耳のための演劇』となると言語理解を超えた音そのものの身体性にあてているんですが、原文はフランス語で日本語訳がない上、多言語だけでなく意味をなしていない音のための単語が出てくるので、読むための敷居も高いです。認識についてはヘーゲルは勿論、宇宙論における人間原理を考えることは面白いです。
本当は余談の方が話したいんですよね。

ダイオキシン類については環境省と塩ビ工業・環境協会を参考にしました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

有限会社アイ・エス・オー 長友

プラスチックは誰にとってどう大事か 

地球環境問題とは人間の地球での居住環境に問題が生じることに対する警笛としての側面が強いと思っています。
海洋プラスチック汚染がメディアに取り上げられるとき、映像で見て分かる痛ましい姿がインパクトになるので、まずは誤飲した生物たちの写真が流れます。分解されないプラスチックは消化管に詰まったままになり、苦しませ続けると。
ただ逆に言うと、プラスチックは分解されない安定性を有しているので、溶出汚染して身体に取り込まれないとも言えます。

じゃあ、何が人間には問題なの?
自動車が動物をひき殺す数とプラスチックゴミが動物を殺す数はどちらが多いの?
人間以外の生物に対して人間が果たすべき役割と責任については古くは聖書から始まりますし、ここでは述べません。

結局のところ、人間に少なからず影響があるから問題になっています。
プラスチックが紫外線分解されるなどしてマイクロ化され海洋に漂うと有害物質を取り込んでいきます。このマイクロプラスチックを知らない間に摂取し、濃縮された有害物質も一緒に身体に取り込んでしまうリスクが問題となります。

また、前提を崩す事にもありますが、プラスチックが純度100%のプラスチックであることは少なく、添加剤が入っています。強度を高めたり、燃えにくくしたり、色を付けたりします。この添加剤は摂取して大丈夫か、といった問題もあるでしょう。勿論、プラスチック製品は溶出検査をクリアしていますが、通常の使用条件と環境は違うので分かりません。

そこで、生分解性プラスチック(バイオマスプラスチック)なら分解されて大丈夫じゃないか、との声が出ています。但し、簡単に水に溶けるようでは、代替品にならないでしょう。実際は、分解されると言っても、コンポストで残飯のような有機廃棄物と発酵させないと簡単には分解されないようです。
また、処分の問題がでてきます。焼却時の熱量は通常のプラスチックより低く傷める心配はないようですが、埋め立てる(単純埋立、安定型埋立)となるとメタン発酵が心配です。一度に大量に埋め立ててメタンガスが出れば、引火の心配が出てきます。通常のプラスチックと見分けがつかなければ、焼却も安定型埋立も選べず、管理型埋立の量が増えてコストがかかるかもしれません。
実際、機械部品などのプラスチック製品は耐久性が必須なので、生分解性には置き換わらないと思いますが。

どんな物質にも特徴はありますし、それが一方では益になり、他方では害になると思います。つまるところ、全知全能でないので、トライアルエラーで取捨選択し、バランスをとっていくしかないと思います。既得権益を失う側もいれば、新たに恩恵を受ける側もいて、それぞれが声を大にして必死に議論するのが一番かなと思います。生活がかかってないと、議論も茶番になりますし、と言いつつ架空の根拠を持ってこられても。。。

すみません、正直、どれだけ正しいことが言えているか分かりません。ここに書いたことが調べる、考えるきっかけの一つになり得れば十分と思って書いています。

プラスチックは全か無かの極端でない選択が得やすい方だと思います。この合理的選択スイッチを数学的に考えるのも、プラスチックの善悪を明瞭にする手段になりうるでしょう。

経済学の数学的基礎に多大な貢献をされた宇沢弘文先生は自動車がもたらす損失を金額で計算しました。原発も同様な議論ができるでしょう。また、単なる古典的加法性で計算するのではなく、ショケ積分のような非加法性を組み込んだ計算も必要かもしれません。ただ現実として恣意性が入る余地のない算出はできないと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

有限会社アイ・エス・オー 長友

ボロヤのイメージ

産廃業者・リサイクル業者というのは、お客様にとってみれば要らないものを処分する業者ですから、そんなものを好んで取りに来るなんてけったいな人だねぇと見られるんしょうか? 今まで一度だけ「ボロ屋が来たぞ」と言われたことがあります。

そんな産廃業者の者が物知り顔で知識をひけらかしても、まずは信頼関係ができていないと疑われるかもしれません。専門分野の学者であれば、古きも新しきも奥も奥まで研究していると信用してもらえるんでしょうが。

かの有名な物理学者のオームも不遇な生活を強いられ、研究に必要な材料をゴミの中から拾ってきたと聞きますが。。。

 

プラスチックの仕分けをしている話をすると、「え、プラスチックを沢山触ってダイオキシン大丈夫?」とお客様に言われたことがあります。「毎日、家電使ったり、建物の中で過ごしたりしていて、ダイオキシン大丈夫?」とは聞きませんでしたが、プラスチックはダイオキシン発生するから危ないといったイメージが刷り込まれていたようです。

最近は海洋汚染の話になり、「ニュースで何となく触れていたけど、打合せが決まって真剣に調べると、色々誤解していたことがあるね」と言われると興味をもっていただけるのは嬉しく思いますが、ダイオキシンと同様、プラスチックは海洋汚染するから危ないとだけ直結したイメージが刷り込まれる怖さもあります。
情報が、どの視点から、どの程度裏付けがあってのことか、私自身もお客様にお話しさせていただくときは注意します。ただ慎重になりすぎると、説明は冗長になりますし、情報の鮮度も落ちます。

情報はそれなりの速さをもって大量に流れています。受け止めるだけでも大変で、そこに考える作業を入れるのは至難の業でしょうが、人間は忘れる生き物と言われるくらいなんですから、考えられるだけの量を受け止めるのが重要だと思います。人間は考える葦とも言われるくらいですから、考えることは大切なことだと思っています。ただ、その量の中にゴミ問題を加える人は、変わった人なんでしょうか? 難しいですね。

プラスチックのゴミ問題に分かりやすい本がありまして(プラスチックリサイクル研究会編著『プラスチックのリサイクル100の知識』東京書籍、1997年)があります。20年以上前の出版ですが、ワンウェイ製品を減らす事や生分解プラスチックのことも書いてあるので、寧ろ20年前に出版された本だから読む価値もあるような気がします。とは言え、アップデートされて敷居の低い書籍も見つけたら、いずれブログに投稿したいとは思っていますが。

なんでも表面化された話題というのは、実は結構古くからあったトピックであることは珍しくないです。
数年前からよく耳にする言葉にビッグデータがあり、これは電子情報収集力や処理能力が技術と社会制度によって向上したことで一般レベルまで話題になるようになったと思っています。私はこの単語を聞いて、データマイニングは勿論、行列(線形代数)や漸近理論なども思い浮かびますが、メディアがビッグデータという名前をつけて突然一斉に取り上げると、急に降って湧いたような最先端理論として出てきた感がして戸惑います。ただ統計に関心を持たれるのは良いことだと思います。

私個人の関心としては人工知能のディープランニングにノンパラメトリックな統計、ベイズ統計、マルチンゲール、合理的期待仮説など絡めた話を勉強したいんですが、それこそ現状時間がありません。

機会があって現在高校生に数学を教えているんですが、統計が必須になって、数学Cがなくなったんですね。行列を使った解き方(記述量削減法)について説明しようとしたら、行列の存在を知らないんでびっくりしました。更に次の過程からは統計に力を入れるみたいです。経済学や統計学が理系だということを高校生に知って欲しいですね。

 

プラスチックの特徴「安定性(生分解性)」の整理の場として記事を書こうとしたら、その前説で終わってしまいました(終わらないと文量と脱線が多くなりました)。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

有限会社アイ・エス・オー 長友

プラスチックとの出会い

ハッピーバレンタインです。今日は皆さん愛に充たされるのでしょうか?

今投稿では、プラスチック愛について語りたいと思います。結ばれる運命の相手というのは気付かぬうちに出会っているものだという話です。

 

私が父の仕事を継いだのは色んな縁があってのことですが、おそらく、父が会社を経営していなければ、今、宮崎にはいなかったと思います。

宮崎に帰ってくるまで一番興味を抱いていたことはフォン=ノイマン・モルゲンシュテルン流期待効用仮説に対する非加法性公理(測度)からのアプローチでした。宮崎については地元の郷土史を手に入れて地名がどこから来ているのか考える程度で、それもいつからか谷川健一氏や大林太良氏の著書から始まり諸先生方の研究に魅了されながら縄文土器、更には建築家の白井晟一氏にまで行ってしまう始末でした。そこまで行ってしまうと、宮崎のみの字も見当たりません。

そんな風に父の仕事や宮崎から縁遠い生活を送っていたわけですが、現在の仕事、特にプラスチックとは心に残る出会いがずっと昔にあったことに後から気付きました。

 

2001年のことです。当時高校生だった私は学校の先生と生徒何人かで宮崎で開催されたノーベル・フォーラムに参加しました。ノーベル賞受賞者によるパネルディスカッションで、1988年から現在まで毎年数回開催されているのに、宮崎で開かれたのはその時の1回だけのようです。運命の出会いには格好の場です。その時来られた先生はアラン・マクダイアミッド氏(2000年化学賞)白川英樹氏(2000年化学賞)江崎玲於奈氏(1973年物理学賞)の3人でした。

そう、白川先生は「導電性高分子の発見と発展」で受賞されているのです。受賞翌年だったこともあり、ミーハーな私は参加者に選ばれた時、科学者の生の声を聞けることに興奮したような記憶があります。

不勉強な私がそこで何を得たかは覚えていませんが、こうしてプラスチックに関わる仕事をしていることに、あの日、私の心に種は蒔かれたのかもしれないのだなと思っています。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

有限会社アイ・エス・オー 長友