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大聖堂の裏に一本の木があった
枝先までひたすら花をつけていた
風が花を啜っていく
ただひたすらのときのなか 生まれてくるものピアンターレには
「植える」という意味と「捨てる」という意味があった
「どちらもそこでひとり生きていくようにということだから」
イタリア人の先生は説明した
はじめに 植えるという形で捨てられていた と
そのときおもったが
ただひたすらのときのなか
捨てられたのかもしれない
植えられたのかもしれない
この木を過ぎて
ナッタ通りを下って行こう
いくつかの通りを行ったら
戻っているだろう
人の世に
(伊藤悠子「この木を過ぎて」『道を小道を』より)