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日別アーカイブ: 2020年2月29日

新型コロナウイルスにおける産業廃棄物業者としての責任

昨日、宮崎での感染の噂を耳にしました。噂の情報源と今日29日に正式発表という話に信憑性が欠けたので、従業員にはその旨を告げました。実際、どこにも正式な情報がなく、昨夕NHKニュースにそうしたデマが流れたことが報告されました。非常に不愉快です。先日は、SNSでチェーンメールが流れてきました。科学的根拠・論理にかける内容を裏付けに、新型コロナの対策を書いたものでした。対策内容は風邪予防に近いものですが、不安を煽るものに違いはありませんでした。

 

想像すれば当たり前なのですが、廃棄物業者は非常に危険にさらされます。
特に一般廃棄物業者は非常に神経を使うと思います。感染者の呼吸器系分泌物(鼻水、痰等)が付着したティッシュ等に触れる可能性があるからです。産廃物についても接触感染の可能性があるでしょう。回収者に感染が認められれば、その事業所ごと動けなくなる可能性があります。このあたりの対応について、厚生労働省の〈新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)〉に合わせることになりますが、濃厚接触の疑いがあったら就業禁止の措置がとられるのでしょうね。
一般廃棄物業者になれば、その影響は甚大なものになると思われます。

 

弊社からもし新型コロナウイルス感染者が出たらどう対応するかは深く考えさせられるところです。
まずは感染を広げないように発熱者以外は全従業員を自宅待機させることが思い浮かびます。そうなると、お客様の対応はどうすればいいのか。弊社のように排出物を有価物として買い取ることができる企業は少ないです。そうは言っても回収できなければ、排出物が溢れかえる心配があります。

それに現在、いろいろな再生材の輸出がままならない状況で、働き方改革もあって、企業としての体力が疲弊しているところです。緊急で弊社の代わりに回収できる企業はあるでしょうか?
この辺りについて、他社様と連携を取らないといけない、と思っているところですが、正直、逆に弊社が応援にいけるだけの人的余裕はありません。それでも、最悪の事態となったときは、助け合わなければならないでしょう。

 

産業廃棄物の管轄は環境省です。
令和2年1月22日付で「新型コロナウイルスを始めとする感染症に係る廃棄物の適正な処理について」、
同年1月30日付で「廃棄物処理における新型コロナウイルス対策の実施等について」
の通知書が各都道府県・政令市宛、日本医師会宛、全国産業資源循環連合会宛に発表されています。宛名は違いますが、概ね同じ事が書かれています。

前者はこの感染性廃棄物を「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」(平成30年3月)に基づいて適正に処理するように注意喚起しています。66頁にわたるマニュアルで、感染性廃棄物の判断基準から医療関係機関の管理と処理、産廃処理の委託契約から処分までの流れ等が書かれています。どちらかと言うと医療廃棄物の取扱いに近い内容です。

後者は「廃棄物処理における新型インフルエンザ対策ガイドライン」(平成21年3月)に準拠して対応するよう注意喚起しています。
こちらは44頁にわたるガイドラインで、新型インフルエンザに関する説明や想定される事態から入り、廃棄攣物からの感染リスクが述べられた後、事業継続計画の策定措置の必要性とチェックポイントが述べられています。
先に述べた通り、人員の確保が挙げられていますが、非常に難しい問題です。
廃棄物処理事業者における感染防止策例が表7〈PDFファイル〉として挙がっています。また、事業継続に重要な要素が不足した場合の優先度のつけ方も重要業務例として挙げられています。ここでは従業員の4割が数週間の欠勤が起こることまで想定するようにありますが、今回の新型コロナウイルスのように、潜伏期間が長く感染者が発生したらその事業所ごと閉鎖するリスクまであります。
プレハブ小屋を買って、従業員を2グループに分け、濃厚接触を避けるのも手段でしょうか。お客様に極力ご迷惑をかけない対策を考えなければなりません。

 

弊社の業務内容として腐敗しうるものはないので、廃棄物倉庫等が溢れかえらないことを第一に考えなければと思っております。最悪の事態に備えて、回収用のフレコンバッグやドラム缶をお客様に予備として渡しておくことも考えられます。

最悪な事態を想定しながら、先に先に動いていくしかないように思います。

 

と書いたところで、全然先に動けていないで綺麗ごとばかりしか書けていないと反省しております。決意表明と思ってください。

2月の請求書や報告書を整理する中で、もしもの事態にどう対処するかお客様にご提案しなければならないのではないかと思い、緊張し始めたので、まずはブログで書かせていただきました。と、書くことも、今更すぎるのでリテラシー的にはどうか分かりません。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

有限会社アイ・エス・オー 長友

プラスチック再生の難しさについて

プラスチックのリサイクルは非常に難しいです。再生材は元々の原料(バージン)材より性能が劣ります。更に異物が入りやすく、純度も落ちる傾向にあります。
これは見てもらった方が分かりやすいです。日本放送協会様のNHK fo Schoolに以下の動画があります。

むずかしいプラスチックのリサイクル
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005402558_00000

プラスチックと言っても、種類によって化学構造式は違います。そうすると、融点が違うし、結合力も違います。ですから、混ざってしまうと、動画のように強度が不足してしまいます。また、製品をつくるには、不良成型は出してはいけません。金型でプラスチック製品をつくるとき、金型の通りにうまく固まる必要もありますが、このあたりも異物の入ったプラスチック原料は取扱いが難しいようです。

 

例えば、PETボトルをリサイクル材料にして更にPETボトルを作るのは簡単ではないです。前述のとおり、再生材は品質が劣るからです。PETやPBTのようにエステル結合をもったプラスチックをポリエステルと言いますが、再生材はポリエステル繊維になることが多いようです。

また、少し専門的になってくると、ポリマーアロイといって種類の違うプラスチックをブレンドすることで、互いのメリットを引き出したプラスチックもあります。
中国が廃プラの輸入停止をしたとき、国内でどうリサイクルをするかの議論があったとき、1種類のプラスチックで劣化した性能を、別の種類のプラスチックで補うようにブレンドするポリマーアロイも取り上げられました。
PETは補填材に回ることが多く、PC/PETやPC/PBTを見る機会が多いです。

ただ先の動画の通り、高度に計算された技術がなければ、実用的な強度は達成されません。
プラスチック原料袋にPC(polycarbonate)と表記してあっても、ともに表記されたグレードをメーカーで調べるとポリマーアロイであることも珍しいことではありません。
お客様はPCと思っていても、実はPC/PETだったことがあるので、グレードも合わせて確認することが重要となっております。

 

エンジニアリング的に、プラスチックのリサイクルでは同一種類かつ同一グレード品を大量かつ安定的にリサイクルフローの中に取り込めないと、品質の安定性も採算性も得られません。

したがって、弊社ではお客様にできるだけ種類毎でのプラスチック排出をご協力いただいております。基本的には弊社で仕分すると採算性が合いません。それでも、極力、弊社内でも仕分をするようにしています。
お客様も人間ですから、同一種類で出されたプラスチックの中に他の種類のプラスチックが混入していることがあります。それをそのまま弊社が原料として納品してしまうと、製造ラインのストップ等の多大な迷惑をかけてしまいます。ですから、弊社の従業員は普段からプラスチックの仕分を行うことで、色んな形や硬さのプラスチックに触れ、異物に気付きやすい目を養っております。

また2019年4月からは障がい者グループと協力して、一部の仕分をお願いしています。少しでも資源が無駄にならないよう、きれいなプラスチックは再生材としてよみがえってもらいたいと思っています。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

有限会社アイ・エス・オー 長友